2007年05月19日

vol.28 ブルース

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『メロディの3度(音階上の3度)が、フラットしたり、
  ナチュラルしたり、マイナーになったり、メジャーに
  なったり、というその動き、揺れそのものがブルース
  なのではないか』

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


 「/04」オフィシャル・スコアブック(リットー・ミュージック/2005年)より。

   詳細→ http://tinyurl.com/95wj3
 


●以前から感じていたのだが、80年代までと90年代以降では、教授の作風に微妙な違いがあるような気がする。


ちょうどそのころニューヨークに移住したことが関係しているのかどうかはよくわからないが、そのころから教授の持つアジア的なテイストの質感や密度が微妙に変化してきたように個人的には感じている。


そのせいか、色で例えるなら茶色や黒系の色彩を感じる響きの割合が増えて来た印象が自分としてはあるのだ。


より混血度が増した、ということになるのだろうか。 


アジアとヨーロッパのせめぎ合い、というのは教授の音楽の特徴であるけれども、その両者だけでは説明のつかない別のニュアンスが教授の音楽にはあると思う。


それは一体何なのだろうとずっと思ってきたのだが、最近は「ブルース」という言葉で解釈するのがいちばんしっくりくる。


山下邦彦が教授の音楽について、ブルースという言葉を使っているのをはじめて見た時はかなり違和感を感じたのだが、このごろは山下の指摘は的を得ているのではないか、と思うようになってきている。


僕は、近年のロックバンドの中ではホワイト・ストライプスというバンドがわりと好きなのだが、ブルースは現代の音楽である、という精神性を理想的な形で体現しているバンドだと思う。


音楽的に似ているところは無いし、アーティストとしてのタイプもまるで違うけれども、教授とホワイト・ストライプスには僕の中では何か通じるものがある。


それは、ひとことでいうなら、「奇妙さ」のようなものだろうか。


教授のアジア的な部分とヨーロッパ的な部分を繋ぐ橋のような役割を、ブルースというメジャーともマイナーともつかない、この奇妙な音楽的要素が担っているのかもしれない。
 

アジア人でありながら、ヨーロッパの音楽に惹かれてしまう人間にとって、この両者の間にどうやってアイデンティティーを確立するか、というのは重要な命題だと思うけれど、教授の奏でる「エイジアン・ブルース」はその大きなヒントになると感じている。


             <文中敬称略> special thanks:Q san



 「/04」オフィシャル・スコアブック

 詳細→ http://tinyurl.com/95wj3


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●あとがき


♪こんにちは、吉村でございますー。


久しぶりの発行です。


アジアとヨーロッパ、というテーマで書こうと思ったのですが、まとまりませんでしたね〜


今回は多忙で書けなかったのではなくて、テーマは決まっていたのですが、考えても考えても一文字も書けませんでした。


このままでは、永遠に発行できないと思い、辻褄が合わないところを残したまま強引に書いてみました。


「何か」はあるような気がするんですけどね・・・。


まだ、自分のなかでこのテーマに結論が出たわけではなく、今後も考えていくことになりそうです。


それではまた〜


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posted by ヨシムラ タケヒロ at 22:54 | Comment(0) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2007年03月15日

vol.27 エイドリアン・ブリュー



━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆--すごく攻撃的ですよね。

 『あれは、トーキング・ヘッズに影響されているんです
  けどね』

 --エイドリアン・ブリューのギター?

 『そうですね。シンセってソロに向いてないっていうか、
  音色がなかなか変化させにくいでしょう。

  〜だから、ギター的な面白さっていうか、ディストー
  ションをかけたような音にしてね』

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━

 
 YMO『BGM』/ライナーノーツより(2003年)。

 詳細→ http://tinyurl.com/2z7m6h


●ジミ・ヘンドリックスだ、いやエイドリアン・ブリューだ、
 など諸説が飛び交っていた『BGM』ヴァージョンの「千のナ
 イフ」のシンセソロは、結局エイドリアン・ブリューの
 ギター・スタイルのシミュレートという解釈が正解のようだ。


 2007年のNHK-FM新年特番では、ジミヘンの話が出ていた。


 ジミヘンの音源をかけながら(たしか伝説のウッドストック
 におけるアメリカ国歌)、「これはピアノでは無理だよね〜」
 みたいな発言もあったと思う。


 たしかにピアノではそうかもしれない。


 しかし、教授も言うように、シンセならば使い方を工夫すれ
 ば、充分ギターに対抗できるのではないかと思う。

 
 『BGM』版「千のナイフ」でも証明されているように、教授と
 いう人はソロイストとしても非常に魅力のある人だと僕は思う
 のだけど、本人はほとんどそういう方面には関心がないようだ。


 再生YMOでの東京ドーム公演の「ウォーターフォード」におけ
 る、ジミヘンを意識した破壊的なシンセソロの美しさが忘れら
 れない僕としては、そろそろまたあのような強烈なプレイヤー
 としての姿を見てみたい。


 
 YMO『BGM』(ソニーミュージック/2003年)

 詳細→ http://tinyurl.com/2z7m6h

 

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●あとがき


♪こんにちは、吉村でございますー。


 先ほどの「千のナイフ」のネタ元の続きですが、
 
 よく考えてみるとエイドリアン・ブリューのギタースタイルと
 いうのは、本人も認めているように、

 ジミヘンの影響がかなりあるので、要はどちらでも同じという
 か、ジミヘンからの隔世遺伝ともいえますね。


 最近、ジミヘンを聴きなおしているんですが、いやもう、
 ホントにトンデモない人だったんですね〜


 わずか4年程という活動期間の短さと、その密度の濃さを
 考えると宿命とか運命っていうのはやっぱりあるのかな〜
 とか思ったり。


 というわけで、なかなか活動やメルマガ発行が思うように
 はかどらないのも自分の宿命だと思うようにしています(爆)。


 などとアホなことを言っている場合ではありませんね。


 なんとかスケジュールを調整して執筆時間を確保していき
 たいと思います。


 それではまた〜


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posted by ヨシムラ タケヒロ at 13:59 | Comment(0) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2007年01月05日

vol.26 断片


━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『僕の発想は基本的にはやっぱり断片的。

  それで、その断片をどう並べるか。

  ヌーヴェル・ヴァーグのモンタージュは断片断片の素材
  で撮っていって、編集でつくるわけだけど、あれに近い
  と思う』

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━

 
 『skmt』(リトルモア/1999年)より。

 詳細→ http://tinyurl.com/b5xvj


●僕が教授の楽曲で初めて意識的に聴いたものは、たぶん
 「テクノポリス」だったと思う。


 それまで聴いていた、日本のニューミュージックと呼ば
 れていたものや歌謡曲から、洋楽に興味が移りつつある
 ころの事だったと記憶している。
 

 「テクノポリス」を初めて聴いたときは衝撃を受けた。


 こんな音楽は聴いたことがない、と思った。


 もちろん、これは僕に限ったことではないのはいうまで
 もない。


 ただ、僕が驚かされたのはそのサウンドはもちろんなの
 だが、何よりもそのメロディーである。


 どういうことかというと、「テクノポリス」という曲は
 複数のパートから構成されているけれど、その各パートの
 主旋律どうしが全く繋がっていないような印象を僕に与えた
 のだ。


 まさに、教授の言う通り「断片が並べられている状態」の
 ようななんともいえない不思議な音楽に聴こえた。


 それなのに、曲全体として聴いてみると、不自然さは全然感じ
 られない。


 当時、家にあったエレクトーンで、コードなどは全然わからな
 いので、メロディーだけを必死になぞって「何なんだこれは」
 と毎日のように弾いていた。


 この体験は強烈で、いまだに僕は教授の音楽だけは、全ての曲
 がというと言い過ぎかもしれないが、多くの場合、他の人の
 音楽とはまったく違うものに聴こえてしまう。


 単に思い入れが強いとか、あくまで個人的な理由によるものだ、
 とずっと考えていたのだが、もしかするとそれだけではなくて、
 やはり教授の発想にもその要因があるのかもしれない。


 
 『skmt』(リトルモア/1999年)

 詳細→ http://tinyurl.com/b5xvj

 

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●あとがき


♪こんにちは、吉村でございますー。


 あけましておめでとうございます。


 久しぶりの発行になりました。


 コチラ↓
 http://www.mag2.com/m/0000205691.html

 
 の発行やそれに伴う諸々の作業に追われ、なかなか教授マガ
 ジンが発行できませんでした。


 再開してみると、教授がブログをやめちゃったりとか、レー
 ベルを移籍/設立していたりとかいろいろ変化が起こってい
 るんですねー。


 教授の新しい動きにも注目しつつ、今年もマイペースの発行に
 なると思いますが、

 どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m


 それではまた〜


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posted by ヨシムラ タケヒロ at 21:32 | Comment(3) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2006年09月28日

vol.25 赤組/青組


━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『僕が最近やっている色分けを教えてあげましょうか。

  赤組と青組に分けてるんですけどね。

  まず、赤組に吉田拓郎、青組に井上陽水。

  次に、これが不思議に思うかもしれないけど、赤組に中島み
  ゆき、そして青組にうちのカミさん(松任谷由実)。

  最後に赤組サザンオールスターズ、青組に安全地帯。

  これが最近の色分けなんです』

                   松任谷正隆

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


 「キーボード・スペシャル」1987年2月号
 
 『楕円とガイコツ』山下邦彦/2000年/太田出版)より。

   詳細→ http://tinyurl.com/z792b
 


●これは、僕が今まで読んできた音楽に関する文章のなかでも、
 もっとも重要なもののひとつだ。


 教授がどちらの組に属するかは、言うまでもないと思う。


 それまでにも、自分の好きな楽曲やアーティストに共通する、

 音楽的な特徴や傾向を個人レベルでは認識していた。


 しかし、それはあまりにも一般性に欠けており、明瞭に言語化
 することに困難を感じていたし、周囲にも音楽好きはたくさん
 いたけれど自分と共通する感覚を持っている人物は皆無に近か
 ったので(ゼロではないが)、

 その微妙な価値観を「他人と共有する」ということなど、まず
 不可能だと思っていた。



 それだけに、この松任谷の発言と「青組」専門の音楽研究家、
 山下邦彦の登場は衝撃的だった。



 それまでの、音楽雑誌を初めとする各メディアや音楽評論家に
 対して不満やいら立ちを溜め込んでいた僕は、

 これで「何かが変わるのではないか」と期待した。



 しかし、それから随分時間が経ったけれども、残念ながらほと
 んど状況に変化は無いようだ。



 こういう文章を書く場を持っていると、つい不満をぶちまけた
 くもなるけれど、それでは能がないというか生産性に欠けるの
 で、
 


 こういうものを作ってみた。

 → http://www.mag2.com/m/0000205691.html



 こんなマニアックなものに、一体何人の人に興味を持ってもら
 えるのか、かなり怪しいとは思うけれど、とりあえず始めて
 みようと思う。
 

                      <文中敬称略>



 
 『楕円とガイコツ』山下邦彦/2000年/太田出版)

   詳細→ http://tinyurl.com/z792b

 

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●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。


 というわけで、新メルマガの創刊準備で
 遅くなりました。


 自分としては、この教授マガジンの姉妹/兄弟誌のつもりで
 創刊しました。


 これをお読みの方には、コンセプトを理解していただけると
 思うのですが、一般?の方に伝えるには多少の努力が必要かも
 しれませんね。


 準備号には名前がありませんが、発行人はワタシです(^ ^;


 サイトの方は、準備が出来しだいまたお知らせいたしますね。


 それではまた〜



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posted by ヨシムラ タケヒロ at 20:00 | Comment(2) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2006年08月08日

vol.24 HAS

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『運動量はM2Sの方が遥かに多いんだけど、なぜかものすごい疲
  れた。

  本来ならば、もっと楽しく気軽にやってよかったはずなのに
  やっぱり集中度が違うのかもしれない』

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


 
 『HAS/HAS HUMAN AUDIO SPONGE Live in Barcelona-Tokyo』
  インタビュー/2006年)より(大意抽出)。

   詳細→ http://tinyurl.com/cw982
 


●ヒューマン・オーディオ・スポンジ(以下HAS)のDVDおよびラ
 イブに対する評価は僕の知る限り、演奏部分の不足で見栄えが
 しないなど、
 
 熱心なファンを除いてメディア上では批判的なものもけっこう
 多かったように思う(また、それと同時に本当に彼らには『信
 者』が多いのだな、ということも痛感した)。



 僕もこれに関しては、基本的には批判派と同意見で、サウンド
 はともかく、映像作品としては正直なところあまり面白みがあ
 るものではなかった。



 しかし、僕が問題にしたいのはなぜ彼らがこういう内容のライ
 ブをするのか、彼らにとってライブとは一体何なのか、という
 ことだ。


 もっと生演奏を増やせば好反応が得られることくらい、彼らに
 も充分わかっていると思う。


 期待や予想をはぐらかすというのはYMO時代からの常套手段だけ
 れど、それとも何か違うような気がする。



 教授のライブからずっと感じていたこの疑問の答えがHASのDVD
 を見てようやく解けた。



 もちろん、これはあくまでも僕個人の受け手としての仮説でし
 かないのだが、

 つまり彼らにとってライブは「パフォーマンス」ではない、
 ということだ。


 彼らにとってライブ会場は「実験室」なのだ。


 アルバムとは、その時点での彼らにとって最も興味のある事柄
 について「研究室」というスタジオで作り上げた「研究論文」
 であり(HASとしてのアルバムは無いけれど)、

 ライブとは、その「公開実験」の場、音楽と観客との「化学反
 応」の起こり方を直接試してみる所。


 つまり音楽も我々観客も「実験材料」に過ぎない、ということ
 だ。



 だから、そこには「求められるものを提供する」といった、い
 わゆるエンターテイメント的な「観客の視点」は存在しない。



 彼らのライブに一般的なライブのカタルシスを求めるのは筋違
 いなのだ。



 そして、「実験」であるから、その内容は変化していく。


 実際には、SONORというイベントの性格や単に会場の事情などに
 よるものかもしれないが、ドラムキットの導入など、微妙に内
 容の違う2枚のDVDを見てそれを強く感じた。



 彼らのライブが「完成」することは永遠にないのかもしれない。


 これからも「公開実験」は続いていくのだろう。


 アートはやはり「実験」なのだ。



 『HAS/HAS HUMAN AUDIO SPONGE Live in Barcelona-Tokyo』
  インタビュー/2006年)より。

   詳細→ http://tinyurl.com/cw982
 



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●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。


 それにしても、暑いっすね(-o-;)
 

 幸宏さん、フアナ・モリーナと共演しましたね。

 細野さんのソロと並んで、今後の展開がとても楽しみです。


 教授はどう動くか?


 「insen」ツアーの後が注目ですねー。


 それではまた〜




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posted by ヨシムラ タケヒロ at 12:14 | Comment(2) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2006年07月11日

vol.23 『Bricolages』

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『あんまり面白いリミックスって僕、聴いたことないんですよねぇ。

  でも、これはいいです(笑)。
  
  〜もしかしたら、
   オリジナルの「CHASM」より好きかもしれませんね』

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


  2006年6月25日 NHK-FM「サウンド・ミュージアム」

  アルバム『BRICOLAGES』についてのコメントより。


  『BRICOLAGES』

   詳細→ http://snipurl.com/r1ja



●教授も自画自賛している『CHASM』のリミックス・アルバム
 である『BRICOLAGES』は、

 客観的に見ても、同種のものとしてはかなり聴き応えのあ
 る部類に入る作品といってよいのではないだろうか。



 通常、リミックスに接する態度というと慣れ親しんだオリ
 ジナルがどのように変貌しているかを「確認」するのが主で、

 なかなか「鑑賞」つまり繰り返し聴くものは確かに多くは
 ないような気がする。




 『BRICOLAGES』の成功の要因を2つの方向から考えてみた。


 まず、ひとつめは、「作家性」という要素だ。


 教授が「スリリング」と評した、エレクトロニカにおける
 肉体的覚醒ともいえそうなファンクトロニカ、
 AOKI takamasa「WAR & PEACE」、



 また教授はその「明るさ」を絶賛、

 僕自身は左右にパンニングされたエレクトリック・ピアノに
 
 「確かに戦争はいけない。でも、じゃあ、一体どうすれば?」

 という、戦争と平和の狭間で揺れ動く現代の困難さや複雑さ
 を感じたコーネリアス「WAR & PEACE」、



 そして教授が「度胆を抜かれた」という(これは僕もそう
 思った)、アイスランド人としてのアイデンティティを全
 開させたクールなSkuli Sverrisson「UNDERCOOLED」、


 さらに立体的で重層的な構築美と、独特な「間」のあるグ
 ルーヴで有機的かつ複雑なサウンドスケープを描く
 Alva Noto「UNDERCOOLED」、




 など、各リミキサーの本領を発揮したトラックが揃っている。




 次に、もう一つの理由はこの作品の基本的スタイル、

 「エレクトロニカ」の持つ構造的特質にあるのではないだ
 ろうか。




 エレクトロニカというサウンドフォーム/スタイルを表す
 キーワードとして、「欠落」という要素があると思う。



 元々、マーカス・ポップに代表されるように、その出発点
 からして、「既存の音楽フォーム」や「音楽作成方法」に
 対する批評として生まれたものなので、一般的な音楽とし
 ての整合性よりも、方法論やコンセプトが重要視される傾
 向がある。



 そのため、エレクトロニカを表す言語表現として「チリチリ」
 「プチプチ」など擬音が多用されるように、

 「明瞭な和声感」や「明確なビート」のような一般にもわ
 かりやすい音楽的価値基準が「欠落」しているように感じる。



 『CHASM』の裏ジャケットに

 「今作の中で聴こえるノイズ音は全てアーティストの作品の一部です」

 という注意書きが添えられているのもエレクトロニカから
 大衆性が「欠落」していることの表れであるといっていい
 だろう。




 ハウスやテクノ的な手法のリミックスでは、その四つ打ち
 ビートやブレイクビーツ、ドラムループ、またアナログシ
 ンセによる無機的な、あるいはジャジーな和音など支配力
 が強力な「公式」が定着してしまっているためか、


 その作品もどちらかといえば予想可能なものが多く、聴き
 手の想定内の枠から外れることが少ないように思う。



 対して、エレクトロニカの場合はそのような支配力の強い
 「公式」がない。



 その分自由度が高く、ヒューマン・オーディオ・スポンジ
 のDVDでも感じたことだが、「チリチリ」「プチプチ」を
 多用したところで、サウンド的にはまだ空間があり、各々
 の個性を表現できるスペースが残されている。



 だから、今回のようにシリアスな思想性を携えた有能なリ
 ミキサーの手にかかると、

 その「欠落」部分を埋めるように「作家性」が表出し、結
 果として音楽的に非常に深みのある作品が生まれた、と結
 論づけてみた。



 もちろん、エレクトロニカならなんでもいい、というわけ
 ではないのだが、

 ここのところ薄れがちだった、エレクトロニカに対する興
 味を再び抱くことになったという意味でも、個人的にも非
 常に重要な一枚だ。



      
  『BRICOLAGES』

   詳細→ http://snipurl.com/r1ja



 
                  Special Thanks:Qsan



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●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。


 す、すいません。

 今回は、ちょっと長かったですね(~_~;)



 先日、現在出回っているのは高価な中古品のみで、
 買い逃してしまって入手をあきらめていた

 ご存知、教授も参加の『KYLIN』『KYLIN LIVE』もセット
 されている渡辺香津美さんの『KAZUMI BOX』を偶然見つけて、
 慌てて買いました。
 

 プレイヤー面のみ語られがちな香津美さんですが、
 なんといっても曲がいいんですよ。

 
 まさか、手に入れられるとは思ってもみなかったんですが、
 生きていると、たまにはいいこともあるんですねえ。
 

 それではまた〜



★『KAZUMI BOX』
 http://snipurl.com/t1ig



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posted by ヨシムラ タケヒロ at 19:00 | Comment(2) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2006年06月20日

Qさまへ、お詫び申しあげます。

Qさまへ


申し訳ありません。


なんとお詫びすればよいやら・・・。


今、vol.22を投稿して、気付きました。


5月29日にQさんからコメントをいただいていたのですね。


コメントをいただいた時はメールで通知が来るように設定しているのですが、見落としてしまっていたようです。


サイト管理者としては、甘過ぎるとしかいいようがありません。


自分の目で、サイトを直接確認することを怠っていたために発生した不手際です。


今後、管理・運営方法を見直し、2度とこのようなことのないように
いたします。


Qさん、本当に申し訳ございませんでした。


心よりお詫び申しあげます。



サイト管理人:吉村たけひろ





posted by ヨシムラ タケヒロ at 21:19 | Comment(2) | その他

vol.22 音色

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『たぶん高校3年生ぐらいにもうすでに、12音音階に基
  づいたヨーロッパ的な音楽システムに対する限界を感じ
  ていたんです。

  それをうち破るものとして、世界の民族音楽だとか、音
  色的な可能性を拡大するものとして、電子音楽というも
  のに興味を持っていた。

  そういう意味では、その後につながっていく、大きな柱
  のひとつですよね』


━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


  アルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」
           ライナーノーツ(2003年)より。

   詳細→ http://snipurl.com/rx7s



●前々回に、音楽における音階的側面からの進化について触
 れたのだが、

 音階面での方法論が行き詰まった場合、他に可能性を探る
 となると、選択肢のひとつとしては、やはり「音色」
 「サウンド」といった方向が残る。


 ポップミュージックが、音楽的な大衆性を失わずに進化を
 続けることができた理由のひとつもここにあるだろう。


 つまり、その保守性から音色的な選択肢が限られているク
 ラシックと違い、「面白ければ、なんでもあり」という価
 値観に支えられたポップミュージックの世界では、サウン
 ドを最新型のものに更新することだけでも、

 その時代のリアリズムや空気感、気分といったものを表現
 できるからだ。





 90年代半ばに、オヴァルなどのエレクトロニカを初めて
 聴いたとき、僕にとって新鮮だったのは、


 「属性からの解放」という要素だった。


 例えば、歪んだエレクトリック・ギターやサイン波の音色
 は、仮にいかなるコンテクストと切り離された状態で鳴ら
 されたとしても、

 それだけで、「ロック」や「テクノ」といった特定の音楽
 ジャンルや、あるいは「ギター」「シンセサイザー」など
 の楽器名を想起させる。
 


 しかし、エレクトロニカ、という呼称もまだ存在しなかっ
 た頃、ハーモニー的には平凡な楽曲であるにも関わらず、

 その作成方法の判読も容易ではない、出所不明の中音域が
 欠落したようにも聴こえる奇妙なサウンドは、「テクノ」
 や「現代音楽」とはまた異なった、既成のジャンルに収ま
 らない、自由な「新しい音楽」として、僕の耳に響いてき
 た。

 

 それから約10年、

 さすがに今では、「エレクトロニカ用サウンドライブラリ
 ー」のようにキット化されたものが登場するなど、すっか
 り音楽ジャンルのひとつとして定着してしまった。



 久しく、興奮する「新しいサウンド」との出会いからは遠
 ざかっているけれど、そろそろ「あっと」驚く音楽の出現
 を心待ちにしているのは僕だけではないだろう。



 「イエロー・マジック・オーケストラ」

   詳細→ http://snipurl.com/rx7s


 




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●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。

 今日も暑いところが多かったようですね。


 でも最近、休みと晴天が重ならないので、布団を干せませ
 ん(>_<)

 最低、週に一度は干さないと気持ち悪いっす。


 どーも、寝つきが悪いのはそれが原因かもしれないですね。


 それではまた〜


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posted by ヨシムラ タケヒロ at 20:48 | Comment(4) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

2006年05月31日

vol.21 言葉

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『この場合、音楽は目的を達成する手段にすぎない。

  これは否定的な意味ではなく、むしろ音楽を作るモチベ
  ーションが低下している現在において有効な在り方の1
  つだろう』

                    渋谷慶一郎

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


  「坂本龍一の作曲技法」
      (リットー・ミュージック/2002年)より。

   詳細→ http://tinyurl.com/d4oor



●これは、地雷廃絶のキャンペーン・ソングとして書かれた
 「ZERO LANDMINE」についての解説からの一文。



 この曲や最近の「ROKKASHO」「UNDERCOOLED」など音楽作品
 はもちろん、

 音楽活動以外の露出度の高さにも表れているように、

 近年の教授にとって、社会との関わりという要素は
 表現者として、とても重要なテーマのようだ。



 こういうテーマを扱う場合、どうしても避けられないのが、

 基本的には、言語に依存しないタイプの音楽家である教授
 が「言葉」とどう向き合うのか、という問題だろう。



 何らかの主義主張を掲げた作品は、世の中の人々に届いて
 こそ意味がある。


 それには、やはり「言葉の力」を活用するのが最も
 効率的であると考えるのはとても自然なことだと思う。



 「ROKKASHO」や「UNDERCOOLED」を聴いて思うのは、この
 ラッパーとのコラボレーション、というスタイルは教授に
 とても合うのではないだろうか、ということだ。



 例えば、「ZERO LANDMINE」のように非常にメッセージ性の
 強い歌詞を歌メロに乗せるような方法の場合、

 原則的には、歌詞を無視して音楽と接することにしている
 僕のようなリスナーだと、メロディーという純音楽的な魅
 力が言葉の内容によっては妨害されているように感じるこ
 とがある。



 その点、ラップの場合はよりパーカッシヴでリズミカルな
 色合いが強いせいか、少々ヘヴィーなメッセージが語られ
 ていても、その本来非常に自己主張の強い方法論の割には
 音楽的な抵抗感が少なく、

 リズム的要素の一部として同化して、受け入れることがで
 きる感じが個人的にはする。



 こういうスタイルの導入に関しては、もしかすると渋谷陽
 一の影響でエミネムも聴いていた、という最近の教授の学
 習の成果も多少あるのかもしれない。



 「売れる音楽はもうやらない」みたいな発言も近年にはあ
 ったけれども、


 やはり教授という人は「ポップ・ミュージック」の人なの
 だな、

 と改めて思った。


                    <文中敬称略>

                

  「坂本龍一の作曲技法」
 
   詳細→ http://tinyurl.com/d4oor


-------------------------------------------------------------

●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。

 ようやく晴れの日が増えてきましたね。


 やっと書けました(^ ^;
 (当初の予定とは少し違う内容になりましたが)


 いやー、怒濤のような5月でございました。

 ゆっくり音楽を聴く時間がないというのはかなり
 ストレス溜まります。


 忙しいのも、ほどほどにしないといけませんねー。


 みなさまもお気をつけて♪



 そうだ、これも早く買わないと!

 → http://snipurl.com/r1ja



 
 
 それではまた〜


●ストップ六ヶ所 
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   http://www.sitesakamoto.com/



★アメリカは恐いっすね・・・

http://1muryoureport.com/?2399
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2006年04月30日

vol.20 フュージョン

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
  
☆『いま、ジャズ系のフュージョンなんかはかなり洗練され
  たコード進行もっててね。

  ほんとうに印象派の作曲家みたいなコード使ったりね、
  難しいことやるんだけど、音楽としてそんなに面白くな
  いのね。

  ああいう音楽の洗練のされ方っていうのは音楽の本質的
  な面白さとちょっと離れている傾向がある』


━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━


 
 「FMファン」1983年3月23日号より

 『坂本龍一・全仕事』(太田出版/1991年)に収録。


 詳細→ http://tinyurl.com/7daqd



●フュージョンという音楽については、僕はジャンルとして
 のファンといえるほど熱心なリスナーではない。


 しかし、フュージョンと呼ばれる音楽の中にとても好きな
 ものが多いのも事実なので、多くの音楽評論家の無理解で
 次元の低いフュージョン批判には本当に腹立たしい思いを
 抱いていた。


 その点、教授のフュージョンを理解したうえでのこの発言
 にはなるほどと納得できた。



 これは僕の場合であるが、制作者の視点からフュージョン
 を聴いていると、あまりの複雑さに

 「もう、これ以上音楽的に発展する余地がないのではないか」

 という一種の「どん詰まり感」というか音楽的な袋小路を
 感じてしまうことがある。



 たとえば、ハーモニー面ひとつとっても、非常に技巧的で
 この先はクラシックに習えばシェーンベルクなどの12音
 技法や無調化の方向しか残されていないという気がするし、

 そこまで行ってしまうと、学術的には有意義だとしても、
 やはり一般の音楽ファンに訴求力のあるものが出てくる可
 能性は低い、と考えるのが妥当ではないかと思う。
 


 実際、快楽主義的な側面も大きいフュージョンでそこまで
 やってしまうと音楽としての魅力が失われてしまうので、

 事実上、進化はストップしたまま、というのが僕の実感だ。



 とはいえ、言うまでもなく「12個の音」という音階上の
 基本的な制約はフュージョンに限ったことではない。



 教授も指摘しているように、大衆音楽の枠組みから外れな
 い範囲での12音階の可能性はボサノバで頂点を極めた、
 と言ってよいのではないだろうか。



 山下邦彦が研究しているレベルまで掘り下げての話や、個
 性的なスタイルを持った作曲家の出現という意味ではまだ
 可能性はあると思うが、

 複雑化、簡略化、西洋的、東洋的、など複数の方向から考
 えてみても、

 一般的な全体論として「新しい音楽ジャンル」と認識され
 るほどの斬新なものが現れるのは、ハーモニー/音階面だ
 けから考えると困難であるように感じる。



 では、「音楽の可能性」とはどこにあるのか、ということ
 を次回も考えてみたいと思う。


                    <文中敬称略>

               - Special thanks:Q san -


 『坂本龍一・全仕事』

 詳細→ http://tinyurl.com/7daqd


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●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。

 やっと、暖かくなるきざしが見えてきましたね。


 ところで、ライブ活動をされている方や、またこれから初
 めてのライブを前にして最近は夜も眠れない、など緊張感
 のコントロールでお悩みの方はいらっしゃいませんか?


 先日のソロピアノツアーでもそうでしたが、あの教授でさ
 え、曲を忘れてしまうハプニングが起こったりします。



 そんなライブ前に知っておくと気持ちが楽になる話を
 見つけました。


 精神科のお医者さんお二方による対談です。

  http://1muryoureport.com/?1424



 お坊さんの話以降は音楽家にも直接応用できます。


 ぼくも●●使っちゃいましょうかね。


  http://1muryoureport.com/?1424

 
 
 それではまた〜


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posted by ヨシムラ タケヒロ at 11:25 | Comment(3) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー

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