2006年07月11日

vol.23 『Bricolages』

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☆『あんまり面白いリミックスって僕、聴いたことないんですよねぇ。

  でも、これはいいです(笑)。
  
  〜もしかしたら、
   オリジナルの「CHASM」より好きかもしれませんね』

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  2006年6月25日 NHK-FM「サウンド・ミュージアム」

  アルバム『BRICOLAGES』についてのコメントより。


  『BRICOLAGES』

   詳細→ http://snipurl.com/r1ja



●教授も自画自賛している『CHASM』のリミックス・アルバム
 である『BRICOLAGES』は、

 客観的に見ても、同種のものとしてはかなり聴き応えのあ
 る部類に入る作品といってよいのではないだろうか。



 通常、リミックスに接する態度というと慣れ親しんだオリ
 ジナルがどのように変貌しているかを「確認」するのが主で、

 なかなか「鑑賞」つまり繰り返し聴くものは確かに多くは
 ないような気がする。




 『BRICOLAGES』の成功の要因を2つの方向から考えてみた。


 まず、ひとつめは、「作家性」という要素だ。


 教授が「スリリング」と評した、エレクトロニカにおける
 肉体的覚醒ともいえそうなファンクトロニカ、
 AOKI takamasa「WAR & PEACE」、



 また教授はその「明るさ」を絶賛、

 僕自身は左右にパンニングされたエレクトリック・ピアノに
 
 「確かに戦争はいけない。でも、じゃあ、一体どうすれば?」

 という、戦争と平和の狭間で揺れ動く現代の困難さや複雑さ
 を感じたコーネリアス「WAR & PEACE」、



 そして教授が「度胆を抜かれた」という(これは僕もそう
 思った)、アイスランド人としてのアイデンティティを全
 開させたクールなSkuli Sverrisson「UNDERCOOLED」、


 さらに立体的で重層的な構築美と、独特な「間」のあるグ
 ルーヴで有機的かつ複雑なサウンドスケープを描く
 Alva Noto「UNDERCOOLED」、




 など、各リミキサーの本領を発揮したトラックが揃っている。




 次に、もう一つの理由はこの作品の基本的スタイル、

 「エレクトロニカ」の持つ構造的特質にあるのではないだ
 ろうか。




 エレクトロニカというサウンドフォーム/スタイルを表す
 キーワードとして、「欠落」という要素があると思う。



 元々、マーカス・ポップに代表されるように、その出発点
 からして、「既存の音楽フォーム」や「音楽作成方法」に
 対する批評として生まれたものなので、一般的な音楽とし
 ての整合性よりも、方法論やコンセプトが重要視される傾
 向がある。



 そのため、エレクトロニカを表す言語表現として「チリチリ」
 「プチプチ」など擬音が多用されるように、

 「明瞭な和声感」や「明確なビート」のような一般にもわ
 かりやすい音楽的価値基準が「欠落」しているように感じる。



 『CHASM』の裏ジャケットに

 「今作の中で聴こえるノイズ音は全てアーティストの作品の一部です」

 という注意書きが添えられているのもエレクトロニカから
 大衆性が「欠落」していることの表れであるといっていい
 だろう。




 ハウスやテクノ的な手法のリミックスでは、その四つ打ち
 ビートやブレイクビーツ、ドラムループ、またアナログシ
 ンセによる無機的な、あるいはジャジーな和音など支配力
 が強力な「公式」が定着してしまっているためか、


 その作品もどちらかといえば予想可能なものが多く、聴き
 手の想定内の枠から外れることが少ないように思う。



 対して、エレクトロニカの場合はそのような支配力の強い
 「公式」がない。



 その分自由度が高く、ヒューマン・オーディオ・スポンジ
 のDVDでも感じたことだが、「チリチリ」「プチプチ」を
 多用したところで、サウンド的にはまだ空間があり、各々
 の個性を表現できるスペースが残されている。



 だから、今回のようにシリアスな思想性を携えた有能なリ
 ミキサーの手にかかると、

 その「欠落」部分を埋めるように「作家性」が表出し、結
 果として音楽的に非常に深みのある作品が生まれた、と結
 論づけてみた。



 もちろん、エレクトロニカならなんでもいい、というわけ
 ではないのだが、

 ここのところ薄れがちだった、エレクトロニカに対する興
 味を再び抱くことになったという意味でも、個人的にも非
 常に重要な一枚だ。



      
  『BRICOLAGES』

   詳細→ http://snipurl.com/r1ja



 
                  Special Thanks:Qsan



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●あとがき

♪こんにちは、吉村でございますー。


 す、すいません。

 今回は、ちょっと長かったですね(~_~;)



 先日、現在出回っているのは高価な中古品のみで、
 買い逃してしまって入手をあきらめていた

 ご存知、教授も参加の『KYLIN』『KYLIN LIVE』もセット
 されている渡辺香津美さんの『KAZUMI BOX』を偶然見つけて、
 慌てて買いました。
 

 プレイヤー面のみ語られがちな香津美さんですが、
 なんといっても曲がいいんですよ。

 
 まさか、手に入れられるとは思ってもみなかったんですが、
 生きていると、たまにはいいこともあるんですねえ。
 

 それではまた〜



★『KAZUMI BOX』
 http://snipurl.com/t1ig



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   http://www.stop-rokkasho.org/

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posted by ヨシムラ タケヒロ at 19:00 | Comment(2) | 坂本龍一を考える。-メルマガ・バックナンバー
この記事へのコメント
吉村さんどーもです!今回のブログを読んで、なかなか言葉にならない疑問が説けた気がします、、大衆性の欠如!オウテカなんかはまさにそうなのかなぁ?〜と感じたり、、まだまだ可能性のあるジャンルなのかもしれないですね、、(あまりジャンル分けは嫌いですが)リミックス個人的にはコーネリアスが良かったです!細野さんはちょい渋すぎかな、夏風邪流行ってるみたいなので体調に気をつけてください!次の更新も期待してます。
Posted by Q at 2006年07月24日 19:09
♪Qさん
ども〜(^^

オウテカは日本ではそれなりに認められているような印象もありますが、海外だとボーズ・オブ・カナダとかの方が人気があるようですね。なるほどと思いました。

とはいうものの、音響派以降でしょうか、こういう音楽がそれなりの支持を集めたというのは、今から考えると不思議な気もします。

小山田さんという人はホントに冴えてますよね。僕はアート・リンゼイ『ソルト』でのリミックスがとても好きです。細野さん、確かに地味でしたねー。どんな音だったかすぐには思い出せませんでした(^ ^;

Qさんも体調崩さないでくださいねー♪
Posted by 吉村たけひろ at 2006年07月25日 11:59
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